【納得】校則(学校のきまり)の見直しへ!子どもの心に響く伝え方とは?

どうも、まっつーです。
学級づくりや学校生活を進めていく中で、「子どもたちが校則を守ってくれない…」「注意しても、何度も学校のきまりを破ってしまう…」と悩んでいませんか?
また、「学校のきまりが子どもたちに合っていない…」「今こそ、校則を見直しするべきでは?」と考えている先生もいるかもしれません。
先生が「校則はこういうものだから守りましょう」と一方的に伝えても、子どもたちが本当に納得していないと、心から守ろうとはしません。
今回の記事は、校則(学校のきまり)を見直すための視点や、子どもたちが納得して向き合えるようにするための説明の工夫や指導の方法をわかりやすく解説します!

この記事は以下のような人におすすめ!
- 「きまりを守らせる」のではなく、「納得して自ら守る」指導がしたい
- 子どもたちの「なんで守らなきゃいけないの?」という問いに向き合いたい
- 同じルール違反に繰り返し注意して疲れてしまっている
- ルールを通して、子どもたちに考える力を育てたい
この記事を読めば、子どもたちが 校則(学校のきまり)の“意味”を理解し、納得して行動できるようになるための伝え方や指導のポイントが身につきます。
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校則(学校のきまり)とは何か?

「校則(学校のきまり)」と聞くと、子どもたちに理不尽なルールを押しつける「ブラック校則」を思い浮かべる人もいるかもしれません。
ブラック校則とは、不合理で時代にそぐわず、生徒の人権や個性を侵害するおそれのある校則のことです。
具体的には、過度な髪型の強制、厳しすぎる服装規定、自由を奪うような行動の制限などが挙げられます。
こうした校則は、生徒の自主性や多様性を尊重する教育のあり方と矛盾する可能性があり、教育的な効果についても疑問視されています。
しかし実際には、校則の本来の意義は決してそのようなものではありません。
文部科学省が出している「生徒指導提要(改訂版)令和4年12月公表」の101ページによれば、「校則」の意義や位置付けについて、次のように示されています。
(1) 校則の意義・位置付け
①児童生徒が遵守すべき学習上、生活上の規律として定められる校則は、②児童生徒が健全な学校生活を送り、よりよく成長・発達していくために設けられるものです。校則は、各学校が教育基本法等に沿って教育目標を実現していく過程において、③児童生徒の発達段階や学校、地域の状況、時代の変化等を踏まえて、最終的には校長により制定されるものです。(後略)
①児童生徒が遵守すべき〜校則
児童生徒が遵守すべき学習上、生活上の規律として定められる校則
校則というのは、学校に通う子どもたちが授業や生活を送るうえで、みんなが気持ちよく過ごせるように守るべき約束ごとのことです。
こうした校則は、単に「ルールだから守る」のではありません。
自分とまわりの人の安心・安全、そしてよりよい学びの場を守るために必要な“思いやりのかたち”でもあるのです。
だからこそ、先生たちは「これを守りなさい」ではなく、「なぜこのルールがあるのか?」「守ることでどんな良いことがあるのか?」をていねいに伝えていくことが大切になります。
②児童生徒が健全な〜設けられるもの
児童生徒が健全な学校生活を送り、よりよく成長・発達していくために設けられるもの
校則は、子どもたちが安心して毎日を過ごし、心と体の成長を支えるために設けられた“土台”のようなものなのです。
こうした校則は、子どもたち一人ひとりが「健やかに」「安心して」「前向きに」学校生活を送れるようにするための“仕組み”なのです。
大人の世界で言えば、社会のルールやマナーと同じです。
子どもたちは、校則を通じて、社会の中で生きていく力の“練習”をしているのです。
③児童生徒の発達段階〜制定されるもの
児童生徒の発達段階や学校、地域の状況、時代の変化等を踏まえて、最終的には校長により制定されるもの
「校則」という言葉を聞くと、「昔から決まっているもの」「一度決まったら変わらないもの」と思う人がいるかもしれません。
実は、校則は“変わるもの”です。そしてその校則は、子どもたちの成長段階や、その学校や地域の特性、そして社会の変化に合わせてつくられていくものなのです。
つまり、すべての学校が同じルールでいいというわけではありません。その学校に通う子どもたちにとって、“今”必要なルールをつくることが大切なのです。
このような背景をふまえて、校則は最終的に校長先生が責任をもって決定します。
もちろん、校長が一人で決めるわけではありません。
先生たちや保護者、場合によっては地域の方々とも意見を出し合いながら、「子どもたちにとって本当に必要なきまりは何か?」をじっくり考えて、丁寧に作られていきます。

近年では、子どもたちが参加して校則を一緒につくる「ルールメイキング」という取り組みを行う学校が増えてきています。
校則の運用と見直しのポイント

校則(学校のきまり)は、歴史的な伝統行事や世界遺産のように、変えてはならない「固定されたもの」ではありません。
むしろ、子どもたちの成長や社会の変化に応じて、柔軟に見直し、よりよいものへと進化させていくべきものです。
前述した、文部科学省が出している「生徒指導提要(改訂版)令和4年12月公表」の101ページの続きには、「校則」の運用と見直しについて、次のように示されています。
(2) 校則の運用
校則に基づく指導を行うに当たっては、校則を守らせることばかりにこだわることなく、①何のために設けたきまりであるのか、教職員がその背景や理由についても理解しつつ、②児童生徒が自分事としてその意味を理解して自主的に校則を守るように指導していくことが重要です。(後略)
(3) 校則の見直し
校則を制定してから一定の期間が経過し、学校や地域の状況、社会の変化等を踏まえて、③その意義を適切に説明できないような校則については、改めて学校の教育目的に照らして適切な内容か、現状に合う内容に変更する必要がないか、また、本当に必要なものか、絶えず見直しを行うことが求められます。さらに、④校則によって、教育的意義に照らしても不要に行動が制限されるなど、マイナスの影響を受けている児童生徒がいないか、いる場合にはどのような点に配慮が必要であるか、検証・見直しを図ることも重要です。(後略)
①何のために設けたきまり〜理解
何のために設けたきまりであるのか、教職員がその背景や理由についても理解
校則は、子どもたちが安全で楽しく、落ち着いた学校生活を送るために設けられた大切なきまりです。
しかし、ただ「こう決まっているから」と理由もわからずに守らせようとすると、子どもたちは心の中でこんなふうに思ってしまいます。
実はそのとおりで、ルールを教える先生自身が、“なぜこの校則があるのか?”を理解していなければ、子どもたちに納得のいく説明はできません。
つまり、校則の背景や理由を、まずは先生自身がしっかり理解しておくことが大前提なのです。
②児童生徒が自分事〜指導していくこと
児童生徒が自分事としてその意味を理解して自主的に校則を守るように指導していくこと
たとえば、「廊下は静かに歩きましょう」という校則があったとします。
それを「うるさいからダメ」「走ると先生は怒りますよ」ではなく、
そうやって、“自分ごと”として考える視点を育てていくことが大切なのです。
つまり、「言われたからやる」から「わかったからやろう」へと意識を変化させることが、子どもたちの自立の力・考える力・思いやる力につながっていきます。
③その意義を適切に〜絶えず見直しを行うこと
その意義を適切に説明できないような校則については、改めて学校の教育目的に照らして適切な内容か、現状に合う内容に変更する必要がないか、また、本当に必要なものか、絶えず見直しを行うこと
学校にはさまざまな校則がありますが、先生たちでさえ「なぜこのルールがあるのか?」「どうして必要なのか?」をうまく説明できない校則も存在しています。
こうしたルールは、昔は意味があったかどうかさえわかりませんが、「ずっと前からあるから」「なんとなく決まっているから」という理由だけで残されている校則は、定期的に見直すべきなのです。
大切なのは、次の3つの視点です。
その見直しの先にあるのは、子どもたちが「納得して守れる校則」への進化です。
「先生、それってなんで必要なんですか?」と聞かれたとき、自信をもって、丁寧に、意味を込めて答えられる校則こそ、本当に生きたルールになるのです。
④校則によって〜検証・見直しを図ること
校則によって、教育的意義に照らしても不要に行動が制限されるなど、マイナスの影響を受けている児童生徒がいないか、いる場合にはどのような点に配慮が必要であるか、検証・見直しを図ること
校則が、本来の教育の目的からずれてしまい、逆に子どもたちの行動を不必要に縛ってしまっているとしたら、それは早急に見直すべきサインです。
たとえば、次のようなことを感じたことはないでしょうか?
これらは、本来は子どもたちの成長や安心のためにあるべき校則が、“子どもの可能性を制限するもの”になってしまっている例です。
大人が「この校則によって、誰かが困っていないか?」と問い直し、冷静に検証・見直しをする姿勢を持ち続けることが必要です。
校則の具体例20選とその説明の仕方
学校ごとに校則の内容は異なります。地域の文化や学校の方針、子どもたちの実態によってさまざまです。
しかし、どの学校でも共通して言えるのは、校則は子どもたちが安全で安心な学校生活を送れるようにするための大切なルールであるということです。
ただ「守りなさい」と伝えるのではなく、「なぜその校則があるのか?」「どんな意味や目的があるのか?」をきちんと説明することで、子どもたちはルールを“自分ごと”として受け止めることができるようになります。
そこで、代表的な校則20選を取り上げながら、子どもたちや保護者が納得しやすく、前向きに受け入れられるような説明の仕方をご紹介します。
校則(学校のきまり) | 説明の仕方 | |
---|---|---|
1 | 遅刻や欠席をする時は、学校が指定した時刻までに保護者が必ず電話またはアプリで連絡する。 | 学校では、すべての子どもたちが無事に登校できているかどうかを確認しています。もし連絡がないと「登校中に事故や体調不良など、何かあったのではないか?」と心配になるため、保護者から事前に連絡をいただくことが必要です。 |
2 | 遅刻や早退をする時は、保護者が教室まで送迎する。 | 遅刻や早退の時間帯は、普段の登下校とは違って、先生や交通指導員、保護者、地域の人などの見守りの体制が整っていないことが多く、子どもが一人で移動するのは危険です。保護者の方が教室まで送迎していただくことで、先生が確実に引き継ぎを行え、子どもは安心して学校生活に戻ったり、家に帰ったりすることができます。 |
3 | 決められた通学路で、寄り道をせずに登下校する。 | 学校が指定している通学路は、交通量や安全面がよく確認されていて、大人たちの見守りもある安心な道です。もし別の道を通ったり寄り道をしたりすると、事故やトラブルに気づくのが遅れてしまい、すぐに助けに行けないことがあるため、安全のために通学路を守ることがとても大切です。 |
4 | 登下校中は校帽を被る。 | 校帽には、強い日差しから頭を守り、熱中症を防ぐ大切な役割があります。また、遠くからでも本校の小学生だとすぐに分かるため、先生や交通指導員、保護者、地域の人などが注意して見守ることができ、安全につながります。 |
5 | 学校では名札を着用して生活する。 | 名札をつけていることで、先生や他の学級の子がすぐに名前を呼ぶことができ、声かけや見守りがしやすくなります。また、万が一のけがやトラブルのときにも、本人確認がすぐにできて、迅速に対応することができます。 |
6 | 登校班の集合時刻や出発時刻を守る。 | 登校班の集合時刻や出発時刻を守ることで、みんなで安全に落ち着いて登校することができます。誰かが遅れると、班全体の出発が遅れたり、一人で登校することになって危険が高まったりするため、時間を守ることがとても大切です。 |
7 | 登校中、忘れ物に気づいても家に戻らない。 | 登校中に家へ戻ってしまうと、見守りの目が届かない時間や場所を一人で歩くことになり、事故やトラブルに巻き込まれる危険が高まります。忘れ物があっても、学校に着いてから先生に伝えれば、代わりのものを借りたり、一緒に対応を考えたりすることができるので安心してください。 |
8 | チャイム(時間)を守って行動する。 | 学校では、授業や休み時間などすべての活動に時間が決められており、チャイムはその切り替えの合図です。みんなが時間を守って行動することで、授業がスムーズに始められ、落ち着いた学校生活を送ることができます。 |
9 | ハンカチやティッシュを身につける。 | 手を洗ったあとにハンカチで手をふかないと、菌が広がったり、ノートや机が濡れてしまったりすることがあります。また、くしゃみや鼻水が出たときにすぐにティッシュでふけると、自分も周りの人も気持ちよく過ごすことができます。 |
10 | 学習に必要ないものは学校に持ってこない。 | おもちゃやゲームなど学習に関係のないものを学校に持ってくると、授業に集中できなくなったり、友達とのトラブルの原因になったりすることがあります。また、壊れたり失くしたりしたときに悲しい思いをするだけでなく、先生や保護者の負担にもなってしまうため、持ち込みは控えるようにします。 |
11 | 外から戻ってきたら、手洗いとうがいをする。 | 外から帰ってきた手には目に見えないウイルスや細菌がついていることがあり、そのままにすると病気の原因になってしまいます。手洗いやうがいをすることで、自分だけでなく友達や家族に風邪や感染症をうつさないための大切な予防になります。 |
12 | 上ばきを週末に持ち帰り、ご家庭で洗って、週の初めに持ってくる。 | 上ばきは一週間のうちに教室やトイレなどいろいろな場所を歩くため、目に見えない汚れや菌がたくさんついています。週末に持ち帰って洗うことで、清潔な状態で次の一週間を気持ちよくスタートでき、教室の環境もきれいに保つことができます。 |
13 | 水筒の中身は水またはお茶を入れる。 | ジュースやスポーツドリンクには糖分が多く含まれていて、虫歯や体調不良の原因になることがあります。その点、水やお茶はどの子にも安心して飲めて、健康上のトラブルの心配もないため、みんなが快適に過ごせます。 |
14 | 休み時間はボールを蹴る遊びをしない。 | 休み時間はたくさんの子が限られたスペースで遊んでいるため、ボールを蹴ると予想外の方向に飛んでしまい、人に当たったり物を壊したりして、ケガやトラブルにつながる危険があります。安全に楽しく遊ぶために、ボールを蹴る遊びは休み時間では控えるようにしています。 |
15 | 廊下や階段、トイレ、校舎の裏側などの場所で遊ばない。 | 廊下や階段、トイレ、校舎の裏側などは、遊ぶための場所ではなく、スペースがせまかったり足元がすべりやすかったりして、事故が起きやすくなります。また、先生の目が届きにくい場所では、ケガやトラブルが起きたときに気づくのが遅れてしまうため、遊ばないようにします。 |
16 | 校舎の中は走らずに静かに歩く。 | 校舎内を走ると、友達とぶつかったり自分が転んだりして、けがをする危険があります。また、教室では他の学級が授業をしていたり、保健室ではベッドで寝ている人がいたりするため、静かに歩くことで周りの人への思いやりにもつながります。 |
17 | すべての持ちものに記名する。 | すべての持ちものに名前が書いてあると、落としたり間違って使ってしまったりしたときに、すぐに持ち主のもとへ戻すことができます。また、名前があることで先生や友達もすぐに気づくことができ、物を大切にする気持ちや助け合いの心も育ちます。 |
18 | 一人一台端末のルール:個人情報や相手が傷つく内容のものは書かない。 | インターネット上に書いた言葉は消すことが難しく、知らないうちに誰かを傷つけたり、自分や家族の情報が広がってしまう危険があります。だからこそ、個人情報を書かないことや、相手の気持ちを考えて言葉を使うことがとても大切です。 |
19 | 一人一台端末のルール:カメラで人や物を撮影する時は、相手や持ち主の許可をとる。 | 人や物を撮るときは、その人の気持ちや持ち主の思いがあるので、勝手に撮影すると「イヤだった」「勝手に使われた」と感じさせてしまうことがあります。だからこそ、「撮っていい?」と一言たずねることが、相手を大切にする気持ちや信頼関係をつくる第一歩になります。 |
20 | 一人一台端末のルール:自分のIDと端末を使い、他人のものは使わない。 | 一人一台端末には、自分の学習記録や提出物など大切な情報が入っているため、自分専用のIDと端末を使うことが決められています。他人のものを勝手に使うと、データが消えてしまったり、プライバシーの問題が起きたりして、友達との信頼関係にも悪影響が出ることがあります。 |
納得感を引き出す指導の3ステップ

校則を子どもたちに伝えるとき、「こうしなさい!」と一方的に指示するだけでは、なかなか行動にはつながりません。
表面的には「わかりました!」と返事をしていても、心の中では「なんで?」「意味がわからない…」「めんどうくさい…」と思っている子も少なくないでしょう。
子どもたちにとっては、校則の“背景”や“理由”が見えないままでは、行動に結びつけることは難しいのが現実です。
そこで大切なのが、子ども自身が納得し、「自分でやってみよう」と思えるようにする指導の工夫です。
次に紹介する、納得感を引き出す3つのステップを活用することで、子どもたちの理解と行動をつなげる建設的な関わりが実現できます。
STEP1:考えを引き出す問いかけをする
校則の指導で大切なことは、子どもたち自身が「なぜそのルールがあるのか?」「どうして守る必要があるのか?」を自分の頭と心で考え、納得して動けるようになることです。
そのためには、先生が「問い」を使って子どもの思考を引き出し、一緒に考えていく姿勢が欠かせません。
ここでは、次の4つの問いかけを紹介し、それぞれ具体例を交えながら、子どもたちが納得して校則を受け入れられる説明の仕方をお伝えします。
①背景を考えさせる問い
背景を考えさせる問いとは、子どもたちが校則の表面的なルールだけでなく、その背後にある“理由”や“目的”を自分の頭で考えられるように導く問いかけのことです。
たとえば、「外から戻ってきたら、手洗いとうがいをする」という校則を見た時、多くの子どもたちは「めんどうだな」「手があまり汚れていないから大丈夫でしょ」と感じるかもしれません。そこで、こんな問いをしてみます。
このように問いかけていくと、子どもたちは「ばい菌が広がるから」「友達や家族にうつるかもしれないから」と、自分の言葉でルールの背景に気づいていきます。
その瞬間、ただ面倒に感じていた手洗いやうがいも、「自分やみんなの健康を守るために大切なことなんだ」と納得できるようになります。
②自分ごととして捉えさせる問い
自分ごととして捉えさせる問いとは、子どもが校則を“他人事”ではなく、“自分の生活や経験と深く関わるもの”として受け止められるように導く問いかけのことです。
たとえば、「校舎の中は走らずに静かに歩く」という校則に対して、子どもたちは「ちょっとくらいなら走っていいでしょ」「急いでるから」と言うことがあります。そんなときには、こう問いかけてみましょう。
こうした問いを通して、子どもたちは「自分がケガをするかもしれない」「友達に迷惑をかけてしまうかも」と、ルールを自分の生活に深く関わることとして実感できるようになります。
そうなると、「廊下は歩こうね」という呼びかけが、注意や命令ではなく、「自分や相手を大事にする選択」だと感じられるようになるのです。
③感情に寄り添った問い
感情に寄り添った問いとは、子どもが自分自身や他者の気持ちに目を向けて考えることができるように導く問いかけのことです。
たとえば、「全ての持ちものに記名をすること」という校則は、子どもたちや保護者にとって、「なんで書かなきゃいけないの?」「めんどくさい」と感じる人もいるかもしれません。そんなときは、こう問いかけましょう。
子どもたちは、「見つからなかったら悲しい」「せっかく買ってもらった物をなくしたら申し訳ない」「自分の持ち物がすぐに見つかったら嬉しい」と、自分や他人の気持ちに寄り添った考え方ができるようになります。
④価値観を揺さぶる問い
価値観を揺さぶる問いとは、子どもたちが当たり前だと思っていることにあえて問い直しをすることで、思考を深める問いかけのことです。
ここでは、「登下校中は校帽をかぶる」という校則を例にしてみましょう。ある日、「校帽なんていらないよ」と言う子がいたら、こう聞いてみます。
こうした問いは、「紫外線や熱中症対策」「交通安全の目印になる」といった理由を考えさせるきっかけになります。
もし自由にしたら「校帽を忘れる子が増えるかも」「日差しが強い日もかぶらなくなるかも」と、現実的な想像もできるようになります。
また、「校帽じゃなくても、普通の帽子でも紫外線や熱中症対策はできるよ」や、「うちの学校の帽子が緑色で、近くの学校も同じような色だったら、全然目立たないよ。他の学校と見分けがつきにくいなら、もっと目立つ色に変えた方がいいと思う」という意見が出るかもしれません。
このように、校則の意味や柔軟性について、自分の頭で考えるようになります。
STEP2:理解したことを行動につなげる
たとえば、「チャイム(時間)を守って行動する」や「週末には上ばきを持ち帰る」などの校則を、子どもたち自身で考えたり、先生が丁寧に説明したりすれば、多くの子は「わかりました!」とうなずきます。
ところが、「チャイムが鳴って授業が始まっているにも関わらず、教室に遅れて戻って来る」「上ばきを持ち帰らず、くつ箱に置きっぱなし」など行動に結びつかず、そんな場面に、がっかりした経験はありませんか?
ここで大切なのが、「理解」と「行動」は別ものだということです。
「理解したことを行動につなげる」とは、わかったことを、実際の毎日のふるまいとして実行できるようにすることです。そこで、次のような2つの手立てを講じます。
- できる子を着実に増やす
- 行動に移せない原因を解決する
①できる子を着実に増やす
校則にていて理解したことを行動につなげている子は、必ずいます。
そうした子どもたちが、「あの人は校則を守っていないのにズルい!」「自分だけが損をしている!」と感じてしまわないように、先生がしっかりと価値づけて褒めることがとても大切です。
行動の意味や良さを具体的に言葉にして伝えることが、子どもたちの「やってよかった」という実感につながります。
このような声かけを毎日の中で積み重ねていくことで、校則の意味を理解し、それを進んで行動に移そうとする子どもたちが、少しずつ、でも確実に増えていきます。
②行動に移せない原因を解決する
たとえば、休み時間の後に、子どもたちがチャイム(時間)を守らずに遅れて教室へ戻ってきたとしましょう。
このような場面では、ただ「チャイムを守って行動しましょう」「次は遅れないように気をつけてください」と注意するだけでは不十分です。
「なぜ遅れたのか?」と、まずその理由を丁寧に尋ねることが大切です。

どうして授業に遅れてしまったの?

遊び終わった後にトイレに行っていたので遅れました。

そうだったんだね。次からは、休み時間のはじめか途中でトイレに行くようにしよう。チャイムが鳴ったらすぐに教室に戻れるように意識してみようね。
このような、具体的な行動の見通しをもてる助言をすると、子どもたちは次にどう行動すればよいかを明確に理解し、改善しようとする意欲が生まれます。
STEP3:自分の行動をふり返る
自分がどのような行動をしたのか、どんな場面で校則を意識できたのかを、自分自身のこととして振り返って考えることが大切です。
たとえば、「通学路を歩いて登校できましたか?」「名札を着けて一日を過ごすことができましたか?」といったように、具体的な場面を思い出して、自分の行動を確かめる時間をつくることが、“ふり返り”です。
子どもたちは「できたこと」に気づき、自信をもちます。そして「次はこうしよう」と、よりよい行動を自分で考える力が育ちます。
まとめ
今回は、校則(学校のきまり)を見直すための視点や、子どもたちが納得して向き合えるようにするための説明の工夫や指導の方法について紹介しました。
- 子どもたちが“なぜそのきまりがあるのか”を自分で考えられるようにする問いかけを通して、納得感を引き出すこと
- 「わかったつもり」で終わらせず、日々の生活でどう行動すればいいのかを具体的に伝え、できたことを認めていくこと
- ふり返りを通して、自分の行動を見直し、次にどうするかを考える力を育てていくこと
この記事を読んだことで、「校則だから守りなさい」ではなく、「この校則には意味がある」「自分や友達の安心のために必要なんだ」と、子どもが自ら気づき、納得して行動できる指導のあり方が見えてきたのではないでしょうか。
校則は、子どもを言動に制約をかけて強制的に縛るためのものではありません。
子どもたちが安心して学び、成長していくための“土台”であり、思いやりや社会性を育てる“教材”でもあります。
これからの学校現場では、ただ守らせるのではなく、子どもと一緒に意味を考え、納得して守れる校則づくりがますます求められていきます。
子どもたちの「わかった!」が「やってみよう!」につながる指導を、ぜひ実践に生かしていきましょう。