【学校の雑学⑧】プールの謎に迫る!一年中水がある理由や水泳帽、腰洗い槽、目洗い蛇口も

どうも、まっつーです。
学校のプールを見た時に、「なんで冬でも水が入ってるの?」「水泳帽って、なぜかぶらなきゃいけないの?」「あの小さいプールや蛇口、昔は何に使ってたの?」という疑問を感じたことがあるのではないでしょうか?
実はこれらにはすべて、安全・衛生・教育的な深い理由や歴史的な背景があります。
私たち大人にとっては「当たり前」だったことが、今ではすっかり変わっていることもありますし、逆に昔のやり方が今も残っている理由もあります。
今回の記事は、学校のプールにまつわる雑学(プールに水が一年中入っている理由・水泳帽の役割・廃止された腰洗い槽や目洗い蛇口の謎)をわかりやすく解説します!
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学校のプールの水が一年中入っている理由

学校のプールは、水泳の授業が実施されている6月末から9月上旬の夏の時期にしか使いません。しかし、それ以外の季節でも、なぜか水が張られたままになっています。
「どうして? 使わないなら水を抜いておけば、掃除も楽になるし、ボールが入ったりして困ることもないのに…」と思ったことがある方も多いでしょう。
実際、プールをそのままにしておくと、秋や冬には藻やコケが生えて水が緑色になり、底が見えなくなることさえあります。
悪臭が漂うこともあり、見た目も衛生的にも「とても使えそうにないな」と感じてしまいます。
それでも、学校はあえて水を張ったままにしている理由は何でしょうか?
学校のプールの水は消防のため
実は、学校のプールは火災時の「消防用水」として使えるようにするための防火水槽という役割を担っているのです。
このことは、国の「消防法」にも定められていて、学校の判断で勝手に水を抜くことはできません。
水を抜くときには、かならず消防署に「今から水を抜きます」と連絡をしなければなりません。掃除が終わって再び水を満タンにしたら、「水を入れ終わりました」とまた消防署に連絡します。

これは、いざという時に「プールに水があると思ったのに、空っぽだった!」という事態を防ぐために、連絡をする必要があるんだよ。
火事が起きたとき、消防車が使う水が近くにないと、消火活動が遅れてしまい、被害が大きくなってしまいます。
そのため、地域には「消防水利(しょうぼうすいり)」という仕組みがあり、あらかじめ水を確保しておく設備を整えておく必要があるのです。
この「消防水利」にはさまざまな種類があります。
つまり、学校のプールは地域の命を守るための貴重な水源なのです。
水を抜くとプールが傷んでしまう!?
プールの水をシーズンオフに抜かずに入れておくのには、もうひとつ大きな理由があります。
それは、水が入っていることでプールの劣化を防ぐことができるという点です。
コンクリートやタイルでできたプールの壁面や底面は、水があることで紫外線や雨風のダメージから守られているのです。
逆に水を抜いてしまうと、太陽の光や風雨が直接当たってしまい、ひび割れや劣化が早まり、修繕に多額の費用がかかる原因となります。
プールのような大きな施設は、一度壊れてしまうと簡単には直せません。ですから、水を抜くことは、学校のプールを長く大切に使ううえでも、できるだけ避けたいことなのです。
水泳の授業で水泳帽をかぶる理由

学校のプールの授業で「水泳帽」をかぶるのは、いまや当たり前のルールとなっています。
けれど、よく考えると「なんで帽子が必要なの?」「帽子がないと泳げないの?」と思うかもしれません。
水泳帽には、3つの大切な役割があります。
安全を守るため
水泳帽の役割として、重要なのが子どもたちの安全を守ることです。
学校のプールの授業では、先生たちが同時に多くの子どもたちの動きを見守る必要があります。
水の中では顔が見えにくく、誰がどこにいるのか判別しづらくなることも少なくありません。そんなときに役立つのが、カラフルで目立つ水泳帽です。
赤・黄・青などのはっきりとした色の水泳帽は、水中でもとてもよく見えます。
これは、事故やトラブルを未然に防ぐ“見える化”の工夫として、とても有効です。
とくに泳ぎが苦手な子や不安を感じている子どもをすぐに見つけてサポートできるという点で、先生にとっても大きな安心材料になります。
また、帽子をかぶることで、髪が顔にかかって視界をさえぎるのを防いだり、水の中での動きを妨げないようにしたりするという実用的な効果もあります。
清潔を保ち、髪を守るため
水泳帽の役割の2つ目は、衛生面の改善です。
子どもたちがそのまま髪の毛を出してプールに入ってしまうと、髪の毛が水に浮いて広がったり、落ちた毛がフィルターに詰まったり、プールの水がどんどん汚れてしまいます。
また、髪の長い子は顔に髪がかかって泳ぎにくくなったり、髪に含まれる整髪料の成分が水質に悪影響を及ぼすこともあります。
水泳帽をかぶることで、髪が水の中で広がるのを防ぎ、毛が抜けるのを減らし、プールの水を清潔に保つことができるのです。
また、塩素を含んだ水は髪や頭皮にダメージを与えることもありますが、水泳帽はそうした刺激から髪を守る役割も果たしてくれます。
つまり、水泳帽はプールの衛生と髪の健康を守る、どちらにも優れたアイテムなんです。
教育的に便利なため
学校のプールでは、水泳帽に色分けがされていることがあります。
といったように、泳力や学年ごとに色を分けることで、先生が一目で子どもの状況を把握しやすくなります。
これによって、先生は「誰がどこでどんな練習をしているのか?」を瞬時に判断でき、それぞれに合った指導を行いやすくなるのです。

水泳の級に関しては、水泳帽に級が書かれたマジックテープを貼ったり、カラフルなゴムを付けたりするなど、学校によって工夫されているね。
水泳帽が誕生した歴史
水泳帽には、実はちょっとユニークな誕生のエピソードがあります。
日本で最初に学校用の水泳帽を作ったのは、東京都墨田区に本社を置く「フットマーク株式会社」という会社です。
この会社、もともとは布製のおむつを包む“おむつカバー”を作っていたんです。
ところが、夏になるとおむつカバーが売れなくなってしまうため、この売り上げの落ち込みをなんとかしたいと考えたフットマーク社が目をつけたのが、当時の「海水帽」でした。
これは海水浴で女の子が髪を守るためにかぶっていた帽子で、カラフルなデザインが特徴的でした。
この「海水帽」をヒントに、会社はおむつカバーと同じ素材を使って学校向けの水泳帽を開発したのです。
特に赤や黄色などの“目立つ色”が学校の先生から高く評価され、徐々に全国の学校に広がっていきました。
つまり、水泳帽はもともと赤ちゃんのためのおむつ用品が、子どもたちの安全を守る帽子へと姿を変えたものだったのです。
過去に腰洗い槽があった理由

「腰洗い槽」という言葉を聞くと、「あの冷たい水に入るのが嫌だったなぁ…」という思い出がよみがえる大人の方も多いのではないでしょうか。
子どもたちから見れば、「腰洗い槽って何?」「あの使われていない小さなプールって何なの?」と疑問に感じるでしょう。
腰洗い槽とは、学校のプールサイドに設置されていた浅い水槽で、プールに入る前に腰まで浸かって体を消毒するための設備のことです。
この腰洗い槽には、プール本体よりもはるかに濃い塩素の水が入っていて、足元やおしりなど、プールの水に直接触れる部分を殺菌することが目的です。
腰洗い槽には、歴史的にも衛生的にも深い理由がありました。
腰洗い槽が登場した理由とその背景
腰洗い槽が全国の学校に設置されるようになったきっかけは、1957年、岐阜県大垣市で発生した“プール熱”の大流行にさかのぼります。
このプール熱の正体は、アデノウイルスというウイルスによる感染症で、咽頭炎や結膜炎などの症状を引き起こします。感染が一気に広がったことで、学校現場では深刻な衛生課題となりました。
この事態を受けて、岐阜県薬科大学の研究チームが、高濃度の塩素水に浸かることで感染を防ぐ方法として腰洗い槽を提案します。
大垣市のプールで実験的に導入され、一定の効果が確認されたことで、1964年には塩素濃度50〜100mg/Lという明確な基準とともに、全国の学校に普及していきました。
当時のプールは現在のように浄化設備が整っておらず、きれいな水に循環・浄化することができませんでした。
また、一度に大勢の子どもたちが利用するため、シャワーで全身を洗う時間が十分にとれないという事情もあり、手早く消毒ができる腰洗い槽を使用することは合理的な判断だったのです。
腰洗い槽の使い方とその問題点
腰洗い槽には、プールの水よりも約50~250倍も濃い塩素水が使われていました。
例えば、通常のプールの塩素濃度が0.4〜1.0mg/Lに対し、腰洗い槽は50〜100mg/Lと非常に高濃度。水道水よりも圧倒的に濃いのです。
使い方としては、「腰まで10秒間浸かる」というのが一般的で、顔に水がかからないように手を頭に乗せて入るよう指導されることもありました。
中には、肩まで浸からせる学校もあったようで、「プールより腰洗い槽の方が嫌だった」という子どももいたほどです。
しかしその一方で、「本当に効果があるのか?」という疑問も生まれていました。実際、山口県薬剤師会では、大腸菌をつけた水着を使用する実験が行われました。
- 腰洗い槽と同じ濃度の塩素水に5分間浸した場合
- 流水(シャワー)で30秒洗い流した場合
この2つを比べると、除菌効果にほとんど差がないことが分かったのです。
しかも、腰洗い槽に30秒ほどしか浸からない通常の使い方では、殺菌効果は不十分であるということも指摘されました。
さらに、濃い塩素水によって皮膚がかぶれるなどのトラブルが報告されることもあり、安全面での配慮が求められるようになりました。
なぜ腰洗い槽はなくなったの?
2001年、厚生労働省が学校プールの衛生基準を改訂した際、マニュアルから「腰洗い槽の設置」の項目が削除されました。
これは、全国の学校にろ過装置付きプールが整備され始めたことが背景にあります。
ろ過装置があれば、プールの水を常に循環・浄化しながら利用できるため、以前のように大量の塩素で一時的に殺菌する必要がなくなったのです。
同時に、シャワーで全身を30秒程度しっかり洗い流すことが、腰洗い槽と同等以上の除菌効果があると科学的にも確認されました。

シャワーから冷たい水ではなく温かいお湯が出る設備が整っている学校もあり、子どもたちは不快な思いをすることなく、安心してシャワーを浴びることができます。
このため、現在ではほとんどの学校が腰洗い槽を廃止しています。
過去に目洗い蛇口(洗眼器)があった理由

かつて、学校の水泳の授業では「水道で目をしっかり洗いましょう」と指導されるのが当たり前でした。
プールサイドには「洗眼器」と呼ばれる目を洗うための専用の蛇口が設置されており、子どもたちは痛みをこらえながらも、蛇口に目を近づけて水道水で目を洗っていたのです。
この洗眼の目的は、プールの塩素や細菌、ウイルスを洗い流して目を守ることです。
当時のプールは、今ほど水質管理が徹底されておらず、塩素消毒の濃度もまちまちで、ゴーグルの使用も一般的ではなかったため、目に不快感を覚える子どもも多かったのです。
そのため、結膜炎や「プール熱」と呼ばれる咽頭結膜熱などの感染症予防として、水道水で目を洗うことが良い習慣と考えられてきました。
しかし、現在ではこの「洗眼指導」が大きく見直されています。
洗眼が見直されるきっかけ
2008年、慶應義塾大学の眼科グループが発表した論文が、学校の洗眼指導を大きく揺るがすきっかけとなります。この研究によって、以下のようなことが明らかになりました。
つまり、目を守るためにしていた洗眼が、逆に目を傷つけていた可能性があったということです。
さらに日本眼科医会は、こうした研究を受けて以下のような見解を示しました。
このように、長時間の洗眼は逆効果であること、ゴーグルの着用が目を守る最も効果的な方法であることが明らかになり、学校現場でも洗眼指導が見直されるようになりました。
「目を水で洗うこと」は本当にダメなの?

「目にゴミが入ったら、水で洗いなさい」って言われることがあるけど、これもダメなのかな?

「絶対に水を使ってはいけない」ということではないんだよ。
大切なことは、「目を洗うこと=絶対にしてはいけないこと」ではないということです。つまり、「必要なときだけ、必要な分だけ」という視点です。
- ゴーグルを使わずに長時間泳いだとき
- プールの水が目に入り、「目が痛い」「かゆい」「違和感がある」と子どもが訴えたとき
- 雑菌が多い池や川で泳いだとき
などの場合は、水道水で目を数秒洗い流すことが適切な処置となることがあります。
また、家庭でシャンプーやほこりが目に入ったときなど、異物を除去するための応急措置としての洗眼は有効です。
重要なのは、「必要なときだけ、必要な分だけ」という視点です。
一方で、習慣として無意味に洗い続けたり、プールのたびに何十秒も洗眼させたりすることは、逆に目の健康を損なうリスクがあるということを理解しておく必要があります。
まとめ
今回は学校のプールにまつわる雑学(プールに水が一年中入っている理由・水泳帽の役割・廃止された腰洗い槽や目洗い蛇口の謎)について紹介しました。
- プールの水が一年中入れっぱなしにすることで、防火用水としての大切な役割を果たしていること
- 水泳帽には、安全・衛生・教育的な意味があり、プールでの学びを支えていること
- かつて当たり前だった腰洗い槽や目洗い蛇口(洗眼器)は、時代の変化と科学的な見直しによって廃止されたこと
当たり前に見えるプールの風景の中には、子どもたちの命と健康を守るための工夫や、教育的な意味がたくさん詰まっています。
かつての常識が、今では見直されていたり、逆に今も変わらず大切にされていたり…そうした背景を知っておくことで、日々の指導や保護者への説明にも深みが増します。
この記事を読んだことで、「なぜ水を抜かないの?」「水泳帽ってそんなに大事?」「昔あったあの設備って、何のためだったの?」といった疑問に、自信をもって答えられるようになるはずです。
そして何より、子どもたちに「学校のプールには、見えない工夫や意味がたくさんあるんだよ」と伝えられることが、安全で豊かな学びをつくる第一歩になるのではないでしょうか。