【学校の雑学⑨】なぜ小学生は赤白帽や黄色い帽子をかぶるのか?

どうも、まっつーです。
学校の授業や登下校で、子どもたちが当たり前のように帽子をかぶっている姿を見て、「どうして赤白帽なの?」「なぜ黄色い帽子なの?」と疑問に感じたことがありませんか?
実は、これらの帽子には深い意味と歴史、そして子どもたちを守るための大切な役割があるのです。
今回の記事は、学校で使用されている赤白帽と黄色い帽子の誕生秘話と、そこに込められた教育的・安全的な意味をわかりやすく解説します!
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赤白帽が使われている理由

「赤白帽(紅白帽)」は、今でこそ体育や運動会で当たり前に使われている学校用品のひとつですが、じつはその歴史には昭和の教育改革や社会背景が色濃く関わっています。
もともと、日本の運動会では「赤白はちまき」が使われていました。
全校児童を赤組と白組に分け、勝ち負けを競い合うスタイルは、戦前からすでに定着していたものでしたが、昭和30年代に入ってから、このはちまきに代わる形で登場したのが「赤白帽」だったのです。
この赤白帽を考案したのは、昭和の人気喜劇俳優で落語家でもあった柳家金語楼(やなぎや きんごろう)さんです。
裏返すだけで赤にも白にもなる便利な帽子は、「これ1つで組分けできて便利!」と全国の学校で広まり、今ではほとんどの小学校・幼稚園で当たり前のように使われています。
赤と白の起源は「源平合戦」

なぜ赤白帽は「赤」と「白」の2色なのでしょうか?実はそこには、日本の歴史が関係しています。
起源は、平安時代末期の「源平合戦」にさかのぼります。
- 源氏…白旗
- 平家…赤旗
それぞれの軍旗として戦い、それが人々の記憶に強く残りました。
これが後に、対立する2つの勢力を“赤”と“白”で表す文化へと発展していったと考えられています。
日本では「紅白」はおめでたい色の組み合わせとしても定着しており、「紅白歌合戦」「紅白まんじゅう」「紅白幕」など、祝祭的な行事に多用されています。
勝負ごと、競技、行事、祝い事などに使える万能な色分けとして、学校現場における運動会にも自然と取り入れられていったのです。
赤白帽の3つの役割
赤白帽は、単に色を分けるだけの帽子ではありません。
教育現場におけるさまざまな場面で、3つの役割を果たしています。
安全面:視認性を高め、事故やトラブルを防ぐ
体育の授業や運動会など、広い運動場で多数の子どもたちが同時に動く場面では、誰がどのチームに属しているのかを瞬時に見分けることが必要になります。
赤白帽であれば、表裏をひっくり返すだけで赤チームと白チームにすぐ切り替えることができ、先生にとっても非常に管理しやすいのが特長です。
帽子の色が違うだけで、誤って違うチームの子どもに声をかけることを防いだり、活動中の接触事故を減らしたりすることができます。
衛生面:紫外線や熱中症から子どもを守る
最近では、赤白帽にもUVカット加工が施されているものや、通気性の良いメッシュ生地のものが登場しています。
屋外活動が増える春~秋にかけて、帽子をかぶることで熱中症や紫外線による皮膚ダメージから頭部を守る効果が期待されます。
ただし、夏場に長時間赤面をかぶることで、逆に熱がこもってしまうリスクが指摘されており、今後は色や素材の見直しも求められています。
教育面:チームで協力する経験を育む
運動会では、赤白帽は単なる道具ではなく“演出”の一部でもあります。
チームで団結し、励まし合いながら競技に挑むという経験を、視覚的にわかりやすく演出してくれるのです。
帽子をくるっと裏返して「赤から白へ」「白から赤へ」と切り替える体験は、役割の変化や立場の違いを実感する機会にもなります。
「今度はこっちのチームとしてがんばろう」という切り替えの力や、多角的な視点の育成にもつながります。
赤白帽の課題と期待される進化
近年、赤白帽にはいくつかの課題も浮かび上がっています。
それは「赤は熱を吸収しやすく、熱中症のリスクが高い」という研究結果です。
武蔵野美術大学の調査では、「赤の方が白より熱を吸収し、表面温度が10度も高くなる」という衝撃のデータが示されています。
小学校の体育の授業などでおなじみの赤白帽は、赤の方が白より熱を吸収し、表面温度が10度も高くなる――。武蔵野美術大の北徹朗教授(健康科学)の研究室が、こうした実験結果を明らかにした。体育の授業中の熱中症が増えるなか、北教授は「リスクを避けるためにも、学校現場は対策をとってほしい」と呼び掛ける。(後略)
また、赤白帽が“便利さ”のあまり形を変えず長年使われ続けていることも、課題といえるかもしれません。
子どもの体力や気象状況が変化してきた現代では、「もっと涼しくて軽い素材」「風通しのよい形状」「デザイン性と機能性を両立した新型帽子」など、アップデートが必要な時期に来ているといえるでしょう。
黄色い帽子が使われている理由

いまや多くの小学校で当たり前のように使われている「黄色い帽子」は、どこか可愛らしく、地域の人々の目を引きます。
しかしこの黄色い帽子は、ただの登校アイテムではありません。
実は、命を守るために生まれた、とても大切な「交通安全のシンボル」なのです。
黄色い帽子の誕生秘話
昭和30年代、高度経済成長期に突入した日本では、自家用車の普及が一気に進み、交通事故が社会問題として深刻化していきました。
特に子どもや高齢者が事故の犠牲になるケースが多く、「交通戦争」と呼ばれるほどの非常事態だったのです。
こうした中、和歌山県警察の交通課係長だった坂下敏郎さんが「子どもの命は、大人が守らなければならない」という強い想いを持ち、自ら行動を起こしました。
ある日、坂下さんがたまたま観ていた西部劇の映画。その中で、遠くからでもよく目立つオレンジ色のカウボーイハットを見たとき、「子どもたちに、遠くからでもよく見える目立つ帽子をかぶせたら、事故が減るのではないか?」とひらめいたのです。
この直感をもとに、坂下さんは毎日300メートル離れた場所から、さまざまな色の帽子をかぶった子どもたちを観察するという地道な実験を始めます。
雨の日、曇りの日、夕方、朝方など、あらゆる条件下で実験を繰り返し、延べ1万人以上の子どもたちの協力を得て出た結論が、「黄色が最も視認性が高い」というものでした。
体の小さな子どもたちは、ドライバーから見ると非常に視界に入りにくく、死角に隠れてしまうことも少なくありません。
だからこそ、最も高い位置にある“頭”に、最も目立つ“黄色”を置くことで、遠くからでもすぐに気づけるようにしたのです。
黄色い帽子の全国的な広がり
1960年(昭和35年)、坂下さんの勤務する和歌山西警察署では、管内のすべての小学生や園児に黄色い帽子を着用するよう呼びかけました。
この運動は、ちょうど前の年に流行したヒット曲『黄色いさくらんぼ』の影響もあって、全国紙にも取り上げられ、大きな注目を集めます。
やがてその取り組みは日本全国の教育現場に広がり、小学校の入学準備といえば「黄色い帽子とランドセル」が定番となっていったのです。
そして実際に、黄色い帽子の導入後、子どもの交通事故による死亡件数は徐々に減少していきました。
こうした功績が認められ、坂下さんは内閣総理大臣表彰という異例の栄誉を受けることになります。
現職の警察官がこの表彰を受けたのは、極めて異例のことだったといわれています。
黄色いワッペンを付ける理由

新1年生には、交通安全のしるしとして「黄色いワッペン」を配布することがあります。
この黄色いワッペンは、子どもたちが登下校のときに車や大人の目にとまりやすくするために、目立つ黄色い布に安全の願いが込められたものです。
この取り組みは、昭和40年に当時の富士銀行(現 株式会社みずほフィナンシャルグループ)が交通安全事業として始めました。
黄色いワッペンが配布されるようになったきっかけ
きっかけは、交通事故で子どもを亡くしたお母さんが、「子どもたちを守ってください」という思いを込めた手紙を総理大臣に送ったという新聞記事でした。
その記事を読んだ銀行の社員が、「小さな子どもたちの命を守るためには、まわりの人に気づいてもらえるような目立つ目印が必要だ」と考え、黄色いワッペンをつけてもらう取り組みが始まったのです。
はじめは「黄色い腕章」として配られていましたが、昭和49年から現在のワッペン型になりました。
今では、複数の企業が協力して毎年全国の小学1年生に配っています。
まとめ
今回は、学校で使用されている赤白帽と黄色い帽子の誕生秘話と、そこに込められた教育的・安全的な意味について紹介しました。
- 赤白帽は、源平合戦に由来する日本の伝統文化を背景に、昭和の教育現場の工夫から誕生した組分けと視認性に優れた帽子であること
- 黄色い帽子は、交通戦争と呼ばれた時代に、一人の警察官が「子どもの命を守りたい」という想いから考案した命を守るための交通安全アイテムであること
- どちらの帽子や黄色のワッペンも、ただの“決まり”ではなく、子どもたちを守り、成長を支える深い意味と物語が詰まっていること
この記事を読んだことで、「なんで赤白帽なの?」「どうして黄色の帽子なの?」といった素朴な疑問に対して、子どもたちや保護者にしっかりと説明できる知識と背景が身についたはずです。
学校用品には、時代の流れや社会の課題、そして子どもを思う大人たちの願いが形になったものが多くあります。
赤白帽も、黄色い帽子も、「ただ使うもの」として見るのではなく、その意味や由来を知ることで、子どもたち自身も自分の身を守る意識が育ち、学びが深まっていくでしょう。
ぜひこの記事の内容を、子どもたちとの会話や保護者への説明に生かしていただければと思います。