【学校の雑学②】なぜ黒板は緑色なのか?

どうも、まっつーです。
「毎日見ている黒板、あれってどうして“黒”じゃなくて“緑色”なの?」という小学生の素朴な疑問に、どれだけの大人が答えられるでしょうか?
学校の教室にあるあの黒板。見慣れているけれど、よく見ると色は“黒”ではなく緑色です。
それなのに名前は「黒板」です。どうしてでしょうか?
実はその理由には、日本の教育の歴史と、子どもの学びを守ろうとする大人たちの工夫が詰まっているのです。
今回の記事は、黒板が緑色をしている理由を歴史的な観点からわかりやすく解説します!
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黒板のはじまりは「黒かった」
黒板が日本にやってきたのは、日本の近代教育制度が始まった明治5年(1872年)のことです。
当時の東京大学の前身である「大学南校」に招かれたアメリカ人教師・スコット氏が、黒板をアメリカから持ち込みました。
これが、日本の黒板のはじまりでした。
当時は、石盤あるいは木の板に黒い塗装をした、本当に「黒い板」でした。
そして、アメリカで「black board(黒い板)」と呼ばれていたのを、そのまま直訳して“黒板”と呼ぶようになったのです。
だから「黒板」は最初、本当に“黒かった”のです。
なぜ黒から緑になったのか?
黒板の色が変わり始めたのは、昭和のはじめごろです。
特に、戦後の教室環境が大きく変化した時期に、緑色の黒板が急速に普及していきました。理由は大きく3つあります。
- 視認性が高く、チョークの文字が見やすいから
- 目が疲れにくく、集中力が続くから
- 光の反射をおさえて、どの席からも見やすいから
①〜③の理由について、詳しく説明します。
①視認性が高く、チョークの文字が見やすいから
白や黄色のチョークで書いた文字が、黒色よりも緑色の方がはっきり見えることが分かってきました。
これは視覚的な実験でも確認されていて、子どもたちが文字をくっきり読み取りやすくなるのです。
とくに教室の明るさや自然光の入り方によっては、黒だとチョークが見えにくくなることもありました。
②目が疲れにくく、集中力が続くから
緑色は、人間の目にとって疲れにくく、リラックスしやすい色です。
子どもたちは一日に何時間も黒板を見て授業を受けます。そんな中で、少しでも視覚の負担を軽くするために、黒から緑への変更が進んでいきました。
実際に、昭和30年代から40年代にかけての「ベビーブーム」時代には、1クラスに50〜60人以上の子どもが詰め込まれていたこともあり、教室の環境を少しでも快適にするために、緑の黒板が好まれたのです。
③光の反射をおさえて、どの席からも見やすいから
黒い黒板は、光が当たると反射してテカってしまうことがありました。
特に、教室の前列や窓際の席では、黒板が光って文字が読めなくなることもあります。
その点、緑色は光の反射をおさえる効果があります。
これによって、どの席からでも黒板が見やすくなり、授業への集中が高まるのです。
なぜ「黒板」という名前のままなのか?
ここまで読んで、「じゃあ今は緑色なんだから、“緑板”って呼べばいいのでは?」と思った方もいるかもしれません。
現在多くの教室で使われている黒板は、実際には“緑色”です。にもかかわらず、私たちは今も当たり前のように「黒板」と呼び続けています。
それは、“黒板”という名前が、日本の学校教育の中に長い年月をかけて深く根付いてきた文化的な呼び名だからです。
明治時代にアメリカから「ブラックボード」が導入され、それが直訳されて「黒板」となったときから、すでに教育現場ではこの呼び名が定着し、日常語として使われてきました。
たとえるなら、今でも私たちはスマートフォンのことを「電話」と呼んだり、電子レンジのことを「チンする」と言ったりするのと似ています。
本来の意味から少し変わっていても、言葉だけがそのまま残り、文化として引き継がれているのです。
技術の進化とともに生まれた緑の黒板
黒から緑への変化は、塗料の開発とも深く関係しています。
かつて黒板には、天然の「漆」や「松煙(しょうえん)」といった黒い素材が使われていました。
しかし、これらは発色の調整が難しく、緑色を均一に出すのは困難でした。
昭和30年代以降、合成樹脂塗料の技術が進化したことにより、緑色の塗料が安定して作れるようになり、学校でも一気に普及しました。
また、時代が進むにつれて、スチール製やホーロー製、マグネットが使えるタイプなど、耐久性・視認性・メンテナンス性を考えたさまざまな素材の黒板が登場しています。

現在、学校によっては、子どもの身長や学年に合わせて高さを調節できる黒板や、文字や図形をまっすぐ書きやすくするために、あらかじめ薄いガイドラインが入った黒板を導入しているところもあります。

最近では、プロジェクターの映像や画像を映し出せる投影対応の黒板や、ディスプレイそのものが黒板として使える電子黒板を導入している学校もあるよね。
まとめ
今回は黒板が緑色をしている理由を歴史的な観点から紹介しました。
- もともと黒板は“黒色”で、明治時代にアメリカから導入されたときのまま「黒板」という名前が定着したこと
- 昭和のはじめごろから、子どもの学びやすさを第一に考え、視認性・目の負担・光の反射といった点を改善するために、徐々に“緑色の黒板”へと進化していったこと
- 技術の進歩により、緑色の塗料が安定して使えるようになったことや、現代の授業スタイルに合わせて黒板の素材・機能も多様化していること
この記事を読んだことで、「なぜ今の黒板が緑色なのか?」「なぜ名前はそのまま黒板なのか?」という素朴な疑問に、自信をもって答えられるようになったのではないでしょうか。
黒板はただの“板”ではなく、子どもたちの学びやすさを支えるために、長い年月をかけて改良されてきた教育の道具です。
黒板に込められた工夫や配慮を、ぜひ子どもたちや保護者の方々に伝えてみてください。