【納得】校則が子どもたちの考えや行動につながる伝え方とは?

どうも、まっつーです。
学級づくりや学校生活を進めていく中で、「子どもたちが学校のきまりを守ってくれない…」「注意しても何度も同じことを繰り返してしまう…」と悩んでいませんか?
先生が「校則はこういうものだから守りましょう」と一方的に伝えても、子どもたちが本当に納得していないと、心から守ろうとはしません。
だからこそ大切にしたいのは、子どもたち自身が“なぜこのきまりがあるのか”を理解し、自分の中に落とし込めるようにすることです。
ルールは押しつけるものではなく、“安心・安全・自由に過ごすための約束事”です。
そして、そのルールが「自分たちの生活をよくするためのもの」だと分かったとき、子どもたちの意識は大きく変わるのです。
今回の記事は、「学校のきまりをどう伝えれば、子どもたちが納得して自分から守りたくなるのか?」をテーマに、説明の工夫や指導をわかりやすく解説します!

この記事は以下のような人におすすめ!
- 「きまりを守らせる」のではなく、「納得して守る」指導がしたい
- 「なんで守らなきゃいけないの?」という問いに向き合いたい
- 同じルール違反に繰り返し注意して疲れてしまっている
- ルールを通して、子どもたちに考える力を育てたい
この記事を読めば、子どもたちがきまりの“意味”を理解し、納得して行動できるようになるための指導のポイントや伝え方が身につきます。
この記事を書いた人↓

- 校則とは何か?
- 校則の運用ポイント
- 校則の具体例とその説明内容
- ①遅刻や欠席をする時は、学校が指定した時刻までに保護者が必ず電話またはアプリで連絡する
- ②遅刻や早退をする時は、保護者が教室まで送迎する
- ③決められた通学路で、寄り道をせずに登下校する
- ④登下校中は校帽を被る
- ⑤学校では名札を着用して生活する
- ⑥登校班の出発時刻を守る
- ⑦登校中、忘れ物に気づいても家に戻らない
- ⑧チャイム(時間)を守って行動する
- ⑨ハンカチやティッシュを身につける
- ⑩学習に必要ないものは学校に持ってこない
- ⑪外から戻ってきたら、手洗いとうがいをする
- ⑫上ばきを週末に持ち帰り、ご家庭で洗って、週の初めに持ってくる
- ⑬水筒の中身は水またはお茶を入れる
- ⑭休み時間はボールを蹴る遊びをしない
- ⑮廊下や階段、トイレ、校舎の裏側などの場所で遊ばない
- ⑯校舎の中は走らずに静かに歩く
- ⑰すべての持ちものに記名する
- ⑱タブレットルール:個人情報や相手が傷つく内容のものは書かない
- ⑲タブレットルール:カメラで人や物を撮影する時は、相手や持ち主の許可をとる
- ⑳タブレットルール:自分のIDと端末を使い、人のものは使わない
- 納得感を引き出す指導の3ステップ
- まとめ
校則とは何か?
文部科学省が出している「生徒指導提要(改訂版)令和4年12月公表」の101ページによれば、「校則」の意義や位置付けについて、以下のように示されています。
(1) 校則の意義・位置付け
①児童生徒が遵守すべき学習上、生活上の規律として定められる校則は、②児童生徒が健全な学校生活を送り、よりよく成長・発達していくために設けられるものです。校則は、各学校が教育基本法等に沿って教育目標を実現していく過程において、③児童生徒の発達段階や学校、地域の状況、時代の変化等を踏まえて、最終的には校長により制定されるものです。(後略)
①〜③について詳しく説明します。
①児童生徒が遵守すべき〜校則
児童生徒が遵守すべき学習上、生活上の規律として定められる校則
校則というのは、学校に通う子どもたちが授業や生活を送るうえで、みんなが気持ちよく過ごせるように守るべき約束ごとのことです。
こうした校則は、単に「ルールだから守る」のではありません。
自分とまわりの人の安心・安全、そしてよりよい学びの場を守るために必要な“思いやりのかたち”でもあるのです。
だからこそ、先生たちは「これを守りなさい」ではなく、「なぜこのルールがあるのか?」「守ることでどんな良いことがあるのか?」をていねいに伝えていくことが大切になります。
②児童生徒が健全な〜設けられるもの
児童生徒が健全な学校生活を送り、よりよく成長・発達していくために設けられるもの
校則は、子どもたちが安心して毎日を過ごし、心と体の成長を支えるために設けられた“土台”のようなものなのです。
こうした校則は、子どもたち一人ひとりが「健やかに」「安心して」「前向きに」学校生活を送れるようにするための“仕組み”なのです。
大人の世界で言えば、社会のルールやマナーと同じです。
子どもたちは、校則を通じて、社会の中で生きていく力の“練習”をしているのです。
③児童生徒の発達段階〜制定されるもの
児童生徒の発達段階や学校、地域の状況、時代の変化等を踏まえて、最終的には校長により制定されるもの
「校則」という言葉を聞くと、「昔から決まっているもの」「一度決まったら変わらないもの」と思う人がいるかもしれません。
実は、校則は“変わるもの”です。そしてその校則は、子どもたちの成長段階や、その学校や地域の特性、そして社会の変化に合わせてつくられていくものなのです。
つまり、すべての学校が同じルールでいいというわけではありません。その学校に通う子どもたちにとって、“今”必要なルールをつくることが大切なのです。
このような背景をふまえて、校則は最終的に校長先生が責任をもって決定します。
もちろん、校長が一人で決めるわけではありません。
先生たちや保護者、場合によっては地域の方々とも意見を出し合いながら、「子どもたちにとって本当に必要なきまりは何か?」をじっくり考えて、丁寧に作られていきます。

近年では、子どもたちが参加して校則を一緒につくる「ルールメイキング」という取り組みを行う学校が増えてきています。
校則の運用ポイント
前述した、文部科学省が出している「生徒指導提要(改訂版)令和4年12月公表」の101ページの続きには、「校則」の運用と見直しについて、以下のように示されています。
(2) 校則の運用
校則に基づく指導を行うに当たっては、校則を守らせることばかりにこだわることなく、①何のために設けたきまりであるのか、教職員がその背景や理由についても理解しつつ、②児童生徒が自分事としてその意味を理解して自主的に校則を守るように指導していくことが重要です。(後略)
(3) 校則の見直し
校則を制定してから一定の期間が経過し、学校や地域の状況、社会の変化等を踏まえて、③その意義を適切に説明できないような校則については、改めて学校の教育目的に照らして適切な内容か、現状に合う内容に変更する必要がないか、また、本当に必要なものか、絶えず見直しを行うことが求められます。さらに、④校則によって、教育的意義に照らしても不要に行動が制限されるなど、マイナスの影響を受けている児童生徒がいないか、いる場合にはどのような点に配慮が必要であるか、検証・見直しを図ることも重要です。(後略)
①〜④について、詳しく説明します。
①何のために設けたきまり〜理解
何のために設けたきまりであるのか、教職員がその背景や理由についても理解
校則は、子どもたちが安全で楽しく、落ち着いた学校生活を送るために設けられた大切なきまりです。
しかし、ただ「こう決まっているから」と理由もわからずに守らせようとすると、子どもたちは心の中でこんなふうに思ってしまいます。
実はそのとおりで、ルールを教える先生自身が、“なぜこの校則があるのか?”を理解していなければ、子どもたちに納得のいく説明はできません。
つまり、校則の背景や理由を、まずは先生自身がしっかり理解しておくことが大前提なのです。
②児童生徒が自分事〜指導していくこと
児童生徒が自分事としてその意味を理解して自主的に校則を守るように指導していくこと
たとえば、「廊下は静かに歩きましょう」という校則があったとします。
それを「うるさいからダメ」「走ると先生は怒りますよ」ではなく、
そうやって、“自分ごと”として考える視点を育てていくことが大切なのです。
つまり、「言われたからやる」から「わかったからやろう」へと意識を変化させることが、子どもたちの自立の力・考える力・思いやる力につながっていきます。
③その意義を適切に〜絶えず見直しを行うこと
その意義を適切に説明できないような校則については、改めて学校の教育目的に照らして適切な内容か、現状に合う内容に変更する必要がないか、また、本当に必要なものか、絶えず見直しを行うこと
学校にはさまざまな校則がありますが、先生たちでさえ「なぜこのルールがあるのか」「どうして必要なのか」をうまく説明できない校則も存在しています。
こうしたルールは、昔は意味があったかどうかさえわかりませんが、「ずっと前からあるから」「なんとなく決まっているから」という理由だけで残されている校則は、定期的に見直すべきなのです。
大切なのは、次の3つの視点です。
その見直しの先にあるのは、子どもたちが「納得して守れる校則」への進化です。
「先生、それってなんで必要なんですか?」と聞かれたとき、自信をもって、丁寧に、意味を込めて答えられる校則こそ、本当に生きたルールになるのです。
④校則によって〜検証・見直しを図ること
校則によって、教育的意義に照らしても不要に行動が制限されるなど、マイナスの影響を受けている児童生徒がいないか、いる場合にはどのような点に配慮が必要であるか、検証・見直しを図ること
校則が、本来の教育の目的からずれてしまい、逆に子どもたちの行動を不必要にしばってしまっているとしたら、それは早急に見直すべきサインです。
たとえば、次のようなことを感じたことはないでしょうか?
これらはすべて、本来は子どもたちの成長や安心のためにあるべき校則が、“子どもの可能性をしばるもの”になってしまっている例です。
大人が「この校則によって、誰かが困っていないか?」と問い直し、冷静に検証・見直しをする姿勢を持ち続けることが必要です。
校則の具体例とその説明内容
学校ごとに校則の内容は異なります。地域の文化や学校の方針、子どもたちの実態によって、きまりのあり方はさまざまです。
しかし、どの学校でも共通して言えるのは、校則は子どもたちが安全で安心な学校生活を送れるようにするための大切なルールであるということです。
ただ「守りなさい」と伝えるのではなく、「なぜその校則があるのか?」「どんな意味や目的があるのか?」をきちんと説明することで、子どもたちはルールを“自分ごと”として受け止めることができるようになります。
そこで、代表的な校則の例①〜⑳を取り上げながら、子どもたちが納得しやすく、前向きに受け入れられるような説明の仕方を紹介していきます。
- 遅刻や欠席をする時は、学校が指定した時刻までに保護者が必ず電話またはアプリで連絡する。
- 遅刻や早退をする時は、保護者が教室まで送迎する。
- 決められた通学路で、寄り道をせずに登下校する。
- 登下校中は校帽を被る。
- 学校では名札を着用して生活する。
- 登校班の出発時刻を守る。
- 登校中、忘れ物に気づいても家に戻らない。
- チャイム(時間)を守って行動する。
- ハンカチやティッシュを身につける。
- 学習に必要ないものは学校に持ってこない。
- 外から戻ってきたら、手洗いとうがいをする。
- 上ばきを週末に持ち帰り、ご家庭で洗って、週の初めに持ってくる。
- 水筒の中身は水またはお茶を入れる。
- 休み時間はボールを蹴る遊びをしない。
- 廊下や階段、トイレ、校舎の裏側などの場所で遊ばない。
- 校舎の中は走らずに静かに歩く。
- すべての持ちものに記名する。
- タブレットルール:個人情報や相手が傷つく内容のものは書かない。
- タブレットルール:カメラで人や物を撮影する時は、相手や持ち主の許可をとる。
- タブレットルール:自分のIDと端末を使い、人のものは使わない。
①遅刻や欠席をする時は、学校が指定した時刻までに保護者が必ず電話またはアプリで連絡する
朝、登校するはずの子どもが学校に現れず、連絡もない場合、先生たちは「何かあったのでは?」と強い不安を感じ、心配になります。
通学中の事故や急な体調不良、トラブルなど、緊急事態の可能性があるからです。
そのため、保護者の方から早めに「今日は休みます」「遅れて登校します」と連絡をいただけることで、学校は子どもの無事を確認でき、必要な対応もすぐに始められます。
②遅刻や早退をする時は、保護者が教室まで送迎する
遅刻や早退をする場合は、通常の登下校の時間帯と異なり、校門や昇降口に先生が立っていなかったり、横断歩道に交通指導員さんがいなかったりすることがあります。
もし子どもが一人で登校・下校しようとして事故やトラブルに巻き込まれてしまったら、すぐに対応することが難しくなってしまいます。
そこで、保護者の方が教室まで直接送迎していただくことで、「確かに登校した・下校した」という確認ができ、先生も安心して子どもを引き継ぐことができます。
また、子どもにとっても保護者と一緒に教室まで来たり帰ったりすることで、不安な気持ちが和らぎ、落ち着いた気持ちで学習や休養に向かうことができます。
③決められた通学路で、寄り道をせずに登下校する
学校が指定している通学路は、交通量や信号の有無、歩道の広さ、見守り活動の有無など、安全が確認された道です。
もし子どもが別の道を通ったり、寄り道をしたりすると、先生や地域の方が見守ることができず、事故や不審者との接触といった危険にさらされてしまうかもしれません。
また、災害や緊急時にすぐ保護者と連絡をとりあって行動するためにも、「いつもの道を通る」ことはとても重要です。
学校に「子どもが登校中(下校中)に行方不明になった」という緊急連絡を受ければ、先生たちは真っ先に通学路を確認し、警察に連絡したり、現地に向かったりするのです。
④登下校中は校帽を被る
校帽には、強い日差しから頭を守って熱中症を防ぐという大切な役割があります。
特に夏場は、帽子のある・なしで体への負担が大きく変わります。
また、校帽は色やデザインが統一されているため、遠くからでもすぐに「小学生が歩いている」と周囲に気づいてもらいやすく、交通安全にもつながります。
学校や地域の見守りの方も、帽子を目印に子どもたちの様子を確認しています。
⑤学校では名札を着用して生活する
名札をつけていることで、先生や保護者、他のクラスの子どもがすぐに名前を確認でき、子ども一人ひとりに声をかけやすくなります。
とくに初めて会う先生や地域の方が、すぐに名前で呼べることで、あたたかい人間関係が生まれやすくなります。
また、万が一けがをしたりトラブルが起きたりしたときも、名札があることですぐに本人確認ができ、担任の先生に引き継ぐなど必要な対応を迅速に行うことができます。
⑥登校班の出発時刻を守る
登校班は、一人ではなくみんなで安全に登校するための仕組みです。
出発時刻が守られないと、班のほかの子が待たされて不安になったり、遅刻してしまったりすることがあります。
また、予定外の時間に一人で歩くことになると、交通事故や不審者との接触などのリスクが高まるおそれもあります。
みんなが時間を守って出発することで、先生や地域の見守りの方も安心して子どもたちを見守ることができます。
⑦登校中、忘れ物に気づいても家に戻らない
登校時間は、地域の見守り活動や交通安全の体制が整っている時間帯です。
そこから外れて一人で急いで家に戻ると、交通事故や不審者との接触など、思わぬ危険にさらされる可能性があります。
また、班での登校が崩れてしまうことで、ほかの子どもたちにも不安が広がることがあります。
たとえ忘れ物があっても、学校に着いてから先生に伝えれば、多くの場合は代わりのものを借りたり、対応を相談したりできます。
⑧チャイム(時間)を守って行動する
学校では、授業や休み時間、給食や掃除など、すべての活動に「時間」が決められています。
もし一人ひとりがバラバラに動いてしまうと、学習が始められなかったり、先生の話が聞こえなかったりして、みんなに迷惑がかかってしまいます。
チャイムの音(時間)は、「そろそろ切り替えよう」という合図であり、生活のリズムを整えるサインでもあります。
このルールを守ることで、自分も、まわりの友達も、落ち着いて集中して過ごすことができるようになります。
⑨ハンカチやティッシュを身につける
手を洗ったあとに濡れたままだと、菌やウイルスが手に多くついてしまったり、机やノートが濡れてしまったりします。
また、くしゃみや鼻水、鼻血が出たときにすぐにティッシュでふけることで、自分の身だしなみを整えたり、まわりへの不快感を防いだりすることができます。
学校生活の中で「自分でできることを、自分でしようとする姿勢」を身につけることは、自立の第一歩です。
⑩学習に必要ないものは学校に持ってこない
おもちゃやゲーム、カード類、アクセサリーなど、学習に関係のないものを学校に持ってくると、授業に集中できなくなったり、友達とのトラブルが起きたりする原因になってしまいます。
たとえば、「それ貸して!」「交換しよう!」というやり取りからケンカになったり、「あの子ばかり特別なものを持っている」といった思いが生まれたりして、クラスの中に不公平感やもめごとが生まれることもあります。
また、壊れたり失くしたりしたときには、子ども自身が悲しい思いをするだけでなく、保護者や先生にも大きな負担となります。
特に高価なものや特別なアイテムは、無意識のうちに友達を傷つけたり、誤解を生んでしまうこともあるのです。
⑪外から戻ってきたら、手洗いとうがいをする
外から帰ってきた手には、目に見えないウイルスや細菌がたくさんついていることがあります。
それをそのままにして給食を食べたり、顔を触ったりすると、風邪やインフルエンザなどにかかる原因になってしまいます。
また、うがいをすることで、のどについたウイルスを洗い流し、風邪やインフルエンザなどの感染症の予防にもつながります。
手洗い・うがいをする習慣がついていると、自分だけでなく、友達や家族にも風邪をうつさずにすみます。
⑫上ばきを週末に持ち帰り、ご家庭で洗って、週の初めに持ってくる
1週間の間に、教室や廊下、トイレなど、さまざまな場所を歩くことで、上ばきには目に見えない汚れや菌がたくさんついていきます。
そのまま上ばきを使い続けてしまうと、教室の空気や床が汚れる原因になったり、足のにおいや不衛生な環境につながってしまったりします。
週末に持ち帰って洗うことで、足元がさっぱりし、気持ちよく新しい1週間をスタートさせることができます。
⑬水筒の中身は水またはお茶を入れる
ジュースやスポーツドリンクには糖分が多く含まれており、飲みすぎると虫歯や肥満の原因になることがあります。
特に気温が高い時期は、甘い飲み物が逆にのどの渇きを強めたり、体調をくずしたりすることもあります。
また、ジュースの甘い香りが教室内に広がることで、授業中に気が散ったり、友達との間で「うらやましい」「ずるい」といった気持ちが生まれることもあります。
その点、水やお茶は、体にやさしく、どの子にも平等で安心して飲める飲み物です。
⑭休み時間はボールを蹴る遊びをしない
ボールを使った遊びは楽しく、運動にもなりますが、蹴ったボールが思わぬ方向に飛んでしまい、人に当たったり、物にぶつかってしまうことがあります。
特に休み時間は、多くの子どもが限られたスペースで同時に遊んでいるため、少しの不注意がケガやトラブルにつながることもあるのです。
かつては校庭でのボール蹴り遊びが許可されていた学校でも、児童生徒数の増加により、スペースが十分に確保できず、ケガやトラブルが多発したことから、安全を第一に考えて禁止とせざるを得なかったという事例があります。

本来であれば、子どもたちがボールを蹴って自由に遊べるほどの十分な校庭の広さや、ゆとりある児童生徒数の環境が理想です。しかし現実には、限られたスペースの中で多くの子どもが一斉に活動するため、安全面への配慮が必要になります。
⑮廊下や階段、トイレ、校舎の裏側などの場所で遊ばない
廊下や階段、トイレ、校舎の裏側などの場所は、遊ぶことを想定してつくられていないため、足元がすべりやすかったり、スペースが狭かったりして、転倒や衝突などの事故が起きやすくなります。
とくに階段やトイレは、生活に必要な場であり、だれもが安心して使えるように、静かで安全な空間にしておくことが大切です。
また、校舎の裏側のように目が届きにくい場所では、ケガやトラブルが起きても発見が遅れてしまうことがあります。
⑯校舎の中は走らずに静かに歩く
廊下や階段を走ると、思わぬところで友達とぶつかってけがをしたり、自分が転んでしまったりする危険があります。
特に曲がり角やドアの近くでは、相手が見えにくいため、大きな事故につながることもあるのです。
また、教室では他の学年やクラスの子たちが授業や読書をしていることもあり、足音や大きな声が響くと、集中の妨げになってしまいます。
「静かに歩く」は、自分を守るための行動であると同時に、周りの人に思いやりをもって接する“マナー”でもあります。
⑰すべての持ちものに記名する
学校では、毎日たくさんの子どもたちが同じような文房具や袋物、衣類を使っています。
しかし、記名がないと、落とし物や取り違えが起きたときに「誰のものか」がすぐにわからず、探すのに時間がかかったり、トラブルにつながったりすることがあります。
逆に、名前が書いてあれば、誰かが拾ってくれたときにすぐに持ち主の元へ戻すことができ、物を大切にする気持ちや、助け合いの心も育ちます。
また、先生も「これは◯◯さんのだね」とすぐに対応できるため、学習や活動がスムーズに進み、子どもたちの安心感にもつながります。
⑱タブレットルール:個人情報や相手が傷つく内容のものは書かない
インターネットやデジタル機器によって一度発信した言葉や情報は、あとから消すことが難しく、予想しないかたちで人を傷つけてしまうことがあります。
たとえば、個人情報(名前、住所、電話番号、パスワードなど)を書いてしまうと、悪意のある第三者に利用されてしまう危険があり、自分や家族の安全に関わる大きな問題につながる可能性があります。
また、相手のことを傷つけるような言葉やからかい、悪口などは、相手の心に深い傷を残すだけでなく、いじめやトラブルの原因になることもあります。
インターネットやデジタル機器はとても便利ですが、「言葉」が記録として残るからこそ、使い方には責任とルールが必要です。
⑲タブレットルール:カメラで人や物を撮影する時は、相手や持ち主の許可をとる
カメラで誰かを撮るという行為は、その人の姿や表情を記録することになります。たとえ悪気がなくても、撮られる側にとっては「恥ずかしい」「嫌だった」と感じることがあるかもしれません。
また、物についても、勝手に撮影されることで「大事にしているものを勝手に使われた」と思われてしまうこともあります。
だからこそ、「これ、撮っていい?」「使ってもいい?」と一言声をかけることが、相手を思いやる心のあらわれであり、信頼関係をつくる第一歩です。
⑳タブレットルール:自分のIDと端末を使い、人のものは使わない
学校で使っているタブレット端末には、自分の名前が入ったID(アカウント)と、その人専用の学習記録や成果物、インターネットの検索履歴や提出物など、多くの個人情報が含まれています。
そのため、他人のIDでログインしたり、勝手に誰かの端末を使ったりすることは、間違って操作してデータを消してしまうリスクがあるだけでなく、その人のプライバシーを侵す行為にもなります。
また、何気なく「ちょっとタブレットを貸して」「開いてもいい?」とした行動が、相手にとっては「勝手に使われた」「大事なものを見られた」と感じさせてしまい、友達関係にすき間ができるきっかけになることもあるのです。
納得感を引き出す指導の3ステップ
校則を子どもたちに伝えるとき、「こうしなさい」と一方的に指示するだけでは、なかなか行動にはつながりません。
表面的には「わかりました」と返事をしていても、心の中では「なんで?」「意味がわからない」「めんどうくさい」と思っている子も少なくないでしょう。
子どもたちにとっては、校則の“背景”や“理由”が見えないままでは、行動に結びつけることは難しいのが現実です。
そこで大切なのが、子ども自身が納得し、「自分でやってみよう」と思えるように導く指導の工夫です。
以下に紹介する「納得感を引き出す3ステップ」を活用することで、ただの“注意”や“叱り”ではなく、子どもたちの理解と行動をつなげる建設的な関わりが実現できます。
STEP1:考えを引き出す問いかけをする
指導で大切なことは、子どもたち自身が「なぜそのルールがあるのか?」「どうして守る必要があるのか?」を自分の頭と心で考え、納得して動けるようになることです。
そのためには、先生が「問い」を使って子どもの思考を引き出し、一緒に考えていく姿勢が欠かせません。
ここでは、4つの問いかけの型を紹介し、それぞれ具体例を交えながら、子どもたちが納得して校則を受け入れられる説明の仕方をお伝えします。
背景を考えさせる問い
背景を考えさせる問いとは、子どもたちが校則の表面的なルールだけでなく、その背後にある“理由”や“目的”を自分の頭で考えられるように導く問いかけのことです。
たとえば、「外から戻ってきたら、手洗いとうがいをする」という校則を見た時、多くの子どもたちは「めんどうだな」「手があまり汚れていないから大丈夫でしょ」と感じるかもしれません。そこで、こんな問いをしてみます。
このように問いかけていくと、子どもたちは「バイ菌が広がるから」「友達や家族にうつるかもしれないから」と、自分の言葉でルールの背景や目的に気づいていきます。
その瞬間、ただ面倒に感じていた手洗いやうがいも、「自分やみんなの健康を守るための大切なことなんだ」と納得できるようになります。
自分ごととして捉えさせる問い
自分ごととして捉えさせる問いとは、子どもが校則を“他人事”ではなく、“自分の生活や経験と深く関わるもの”として受け止められるように導く問いかけのことです。
たとえば、「校舎の中は走らずに静かに歩く」という校則に対して、子どもたちは「ちょっとくらいならいいでしょ」「急いでるから」と言うことがあります。そんなときには、こう問いかけてみましょう。
こうした問いを通して、子どもたちは「自分がケガをするかもしれない」「友達に迷惑をかけてしまうかも」と、ルールを*“他人事”ではなく“自分の生活に関わること”として実感できる**ようになります。
そうなると、「廊下は歩こうね」という呼びかけが、注意や命令ではなく、「自分を大事にする選択」だと感じられるようになるのです。
感情に寄り添った問い
感情に寄り添った問いとは、子どもが自分自身や他者の気持ちに目を向けて考えることができるように導く問いかけのことです。
たとえば、「全ての持ちものに記名をすること」という校則は、子どもたち(あるいは保護者)にとって、「なんで書かなきゃいけないの?」「めんどくさい」と感じる人もいるかもしれません。そんなときは、こう問いかけましょう。
子どもたちは、「見つからなかったら悲しい」「せっかく買ってもらった物をなくしたら申し訳ない」「自分の持ち物がすぐに見つかったら嬉しい」と、自分や他人の気持ちに寄り添った考え方ができるようになります。
価値観を揺さぶる問い
価値観を揺さぶる問いとは、子どもたちが当たり前だと思っていることにあえて問い直しをすることで、思考を深める問いのことです。
ここでは、「登下校中は校帽をかぶる」という校則を例にしてみましょう。ある日、「今日は曇ってるし、校帽なんていらない」と言う子がいたら、こう聞いてみます。
こうした問いは、「紫外線や熱中症対策」「交通安全の目印になる」「習慣づけることが大事」といった“理由や社会的な意味”を考えさせるきっかけになります。
もし自由にしたら「校帽を忘れる子が増えるかも」「暑い日もかぶらなくなるかも」と、現実的な想像もできるようになります。
また、「校帽じゃなくても、普通の帽子でも紫外線や熱中症対策はできるよ」や、「うちの学校の帽子が緑色で、近くの学校も同じような色だったら、全然目立たないよ。他の学校と見分けがつきにくいなら、もっと目立つ色に変えた方がいいと思う」という意見が出るかもしれません。
このように、校則の意味や柔軟性について、自分の頭で考えるようになります。
STEP2:理解したことを行動につなげる
たとえば、「チャイム(時間)を守って行動する」や「週末には上ばきを持ち帰る」などの校則を、子どもたち自身で考えたり、先生が丁寧に説明したりすれば、多くの子は「わかりました」とうなずきます。
ところが、「チャイムが鳴って授業が始まっているにも関わらず、教室に遅れて戻って来る」「上ばきを持ち帰らず、くつ箱に置きっぱなし」など行動に結びつかず、そんな場面に、がっかりした経験はありませんか?
ここで大切なのが、「理解」と「行動」は別ものだということです。
「理解したことを行動につなげる」とは、わかったことを、実際の毎日のふるまいとして実行できるようにすることです。そこで、次のような手立てを講じます。
できる子を着実に増やす
理解したことを行動につなげている子は、必ずいます。そうした子どもたちが、「あの人は校則を守っていないのにズルい!」「自分だけが損をしている!」と感じてしまわないように、先生がしっかりと価値づけて褒めることがとても大切です。
行動の意味や良さを具体的に言葉にして伝えることが、子どもたちの「やってよかった」という実感につながります。
このような声かけを毎日の中で積み重ねていくことで、校則の意味を理解し、それを進んで行動に移そうとする子どもたちが、少しずつ、でも確実に増えていきます。
行動に移せない原因を解決する
たとえば、休み時間の後に、子どもたちがチャイム(時間)を守らずに遅れて教室へ戻ってきたとしましょう。
このような場面では、ただ「チャイムを守って行動しましょう」「次は遅れないように気をつけてください」と注意するだけでは不十分です。
「なぜ遅れたのか?」と、その理由を丁寧に尋ねることが大切です。

どうして授業に遅れてしまったの?

遊び終わった後にトイレに行っていたので遅れました。

そうだったんだね。次からは、休み時間のはじめか途中でトイレに行くようにしよう。チャイムが鳴ったらすぐに教室に戻れるように意識してみようね。
このような、具体的な行動の見通しをもてる助言をすると、子どもたちは次にどう行動すればよいかを明確に理解し、改善しようとする意欲が生まれます。
STEP3:自分の行動をふり返る
自分がどのような行動をしたのか、どんな場面で校則を意識できたのかを、自分自身のこととして振り返って考えることが大切です。
たとえば、「通学路を歩いて登校できましたか?」「名札を着けて一日を過ごすことができましたか?」といったように、具体的な場面を思い出して、自分の行動を確かめる時間をつくることが、“ふり返り”です。
子どもたちは「できたこと」に気づき、自信をもちます。そして「次はこうしよう」と、よりよい行動を自分で考える力が育ちます。
まとめ
今回は「学校のきまりをどう伝えれば、子どもたちが納得して自分から守りたくなるのか?」をテーマに、説明の工夫や指導について紹介しました。
- 子どもたちが“なぜそのきまりがあるのか”を自分で考えられるようにする問いかけを通して、納得感を引き出すこと
- 「わかったつもり」で終わらせず、日々の生活でどう行動すればいいのかを具体的に伝え、できたことを認めていくこと
- ふり返りを通して、自分の行動を見直し、次にどうするかを考える力を育てていくこと
この記事を読んだことで、「校則だから守りなさい」ではなく、「この校則には意味がある」「自分や友達の安心のために必要なんだ」と、子どもが自ら気づき、納得して行動できる指導のあり方が見えてきたのではないでしょうか。
校則は、子どもを縛るためのものではありません。
子どもたちが安心して学び、成長していくための“土台”であり、思いやりや社会性を育てる“教材”でもあります。
これからの学校現場では、ただ守らせるのではなく、子どもと一緒に意味を考え、納得して守れる校則づくりがますます求められていきます。
子どもたちの「わかった!」が「やってみよう!」につながる指導を、ぜひ実践に生かしていきましょう。