【厳守】学校給食での食物アレルギー対応!ミスを防ぐ方法

どうも、まっつーです。
学校の様子を見ていて、「除去食って、どうやって準備されるの?」「担任の先生だけで全部対応しているの?」「もしものとき、どう対応するの?」と疑問をもつ人も少なくないと思います。
給食の時間は、子どもたちにとってワクワクする「楽しみの時間」。でも、教師にとってはそう簡単に気を抜ける時間ではありません。
なぜなら、食物アレルギーによる命の危険と常に隣り合わせだからです。
実際に、除去食が提供されたにもかかわらず、「おかわり」をしてしまったことでアナフィラキシーショックを引き起こし、命を落としてしまった痛ましい事故もありました。
そんな悲しい事故を二度と繰り返さないために――。
今回の記事は、学校でどのように除去食を管理し、どんな体制で命を守っているのか。そして、学級でどんな教育や指導が必要かをわかりやすく解説します!

この記事は以下のような人におすすめ!
- 命を守るために担任の先生が何をしているのか気になる
- 学校現場に出る前に現実的なアレルギー対応を学びたい
- アレルギーのある子どもを支える学級づくりを考えている
- 食物アレルギーのある子どもが在籍している学級を受け持っている
- 子どもの命を絶対に守りたい
この記事を読めば、除去食への対応や学級における食物アレルギーに関する指導が理解できるようになり、安心してや学級づくりに取り組むことができるようになります。
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食物アレルギー対応の体制づくり
給食の時間における食物アレルギー対応を、担任の先生だけが一人で管理していると思っている方がいるかもしれません。しかし、それは大きな誤解です。
最近では「チーム学校」という言葉が広く使われるようになりましたが、給食を含む学校のすべての教育活動は、一人の先生に任せるのではなく、学校全体で組織的・計画的に進めていくことが必要不可欠です。
ここでは、学校全体で取り組む食物アレルギーの組織的対応について、①〜③の3つをご紹介します。
①保護者との面談で合意を得る
アレルギー対応を希望する保護者に「学校生活管理指導表」を提出してもらい、その後、面談の手続きを行います。
面談に同席する人は、以下のような複数の関係者が同席するのが一般的です。
そして面談ではまず、以下の情報について保護者と確認・相談をします。
- 過去の食物アレルギー発症(アナフィラキシーを含む)情報
- 家庭での対応状況
- 当該児童生徒に対して学校生活において配慮すべき必要事項
- 薬(エピペンⓇ等)の持参希望の有無
- 緊急時の対応連絡先・方法
- 学級内の児童生徒並びに保護者へ当該児童生徒の食物アレルギー情報を提供することについての了解を得ること
- 給食提供の可否(完全提供・対応食提供・当日の献立による部分提供・弁当対応等)
- 給食献立並びに詳細な食材情報の提供
- 持参する弁当の学校での保管場所・方法(職員室内専用冷蔵庫等)
- 薬(エピペンⓇ等)を持参する場合の取扱い(保管場所と使用方法等)
- 緊急時の対応
加えて、学校での組織的な対応体制や、安全対策について丁寧に説明することで、保護者との信頼関係が深まり、安心感にもつながります。
こうした面談で保護者の合意を得て、学校と家庭がしっかり連携できる体制が整い、万が一の時にも迅速かつ的確な対応が可能になるのです。
②情報の共有と体制づくり
まず大切なのは、担任の先生ひとりに任せきりにしない(担任の先生は一人で抱え込まない)ということです。
食物アレルギーの対応は、いくら経験のある先生でも、一人で行うにはリスクが高すぎます。
だからこそ、学校全体で情報を共有し、連携する体制を整えることが何よりも重要です。
具体的な食材や反応の程度、これまでの経過など細かい情報まで職員全員が把握しておく必要があります。
この共有は、職員会議や特別支援委員会、個別の打ち合わせの場などで丁寧に行われます。

給食の時間には、担任の先生が不在の場合(病気による休みや出張など)に、他の先生が代わりに入って指導することもあるよね?

だから、全教員でアレルギー対応の研修会に毎年参加しているんだよ。
“エピペン”の使用方法についての研修も定期的に実施され、「食物アレルギー緊急時対応マニュアル」に沿った訓練も行われます。
「エピペン」とは、アナフィラキシーという重いアレルギー反応を起こしたことがある人に出される注射の薬です。アナフィラキシーが起きたときにすぐ使うことで、病院での治療を受けるまでの間に、症状の進行を少しおさえる役割があります。「アナフィラキシー補助治療剤」や「アドレナリン自己注射薬」とも呼ばれます。

実際の場面を想定したロールプレイングや、役割分担の確認などを通して、「誰が・いつ・何をするか」を明確にしておくことが、安全な給食時間につながるのです。
③除去食提供日の具体的な対応
「情報を共有して終わり」ではありません。実際に除去食が提供される日には、緊張感のある具体的な動きが求められます。
担任の先生は、管理職や養護教諭、栄養士と一緒に「今日は○○さんに除去食があります」と情報を確認します。
これは前日までに分かっている内容ではありますが、当日改めて確認することで、ミスを防ぐ役割を果たします。
また、職員室のホワイトボードにも、教頭先生(副校長先生)が除去食があることを目立つように「学級・児童名・除去されるメニュー)などを記載し、全職員が意識できるようにします。
※出張で不在になる場合は、当日までに必ず自分で補教の先生に連絡しておきます。一方、急な病気などで出勤できない場合は、管理職が代わりに補教の先生へ連絡します。
給食の配膳時には、担任の先生が「除去食が対象の児童に正しく届いているか?」を必ず目で確認し、その内容を記録用紙にサインすることが基本です。
学校によっては、除去食であることが一目でわかるように、「専用の色のおぼん」を使用するなどの工夫がされています。
さらに、安全を確保するために、管理職や栄養教諭(または栄養士)など別の大人が教室に入り、再度確認を行う「ダブルチェック体制」が整えられています。
給食後には、子どもの健康状態を担任が注意深く観察し、異変がないかを見守ります。
養護教諭にも事前に情報が伝わっているので、もし体調不良を訴えた場合でも、すぐに保健室で適切な対応ができるように準備されています。
また、子ども本人には体調が悪くなったらすぐに先生に知らせるように伝えておきます。
担任の先生だけではなく、学校全体、そして家庭との連携によって、はじめて安全な給食が実現するのです。
こうした取り組みの根底には、「すべての子どもたちが安全に、安心して学校生活を送ってほしい」という強い願いがあるからです。
命を守る学級づくり
「アレルギー対応って、先生がやるものでしょ?」と思われがちですが、実はそれだけでは命を守る体制としては不十分なのです。
私たちが目指すべきは、子どもたち一人ひとりが“命を守る側”として関われる学級づくりです。
つまり、先生だけでなく、学級全体でアレルギーについて理解し、正しい知識と行動を身につけることが何より大切なのです。
ここでは、そのような「命を守る学級づくり」を実現するために、①〜④の4つの指導ポイントがあります。
①食物アレルギーは命に関わるリスクがあること
まず子どもたちに伝えたいのは、食物アレルギーが単なる「好き嫌い」や「体質」ではなく、命に関わる重大なリスクであるということです。
たとえば、アレルギー反応が重症化すると「アナフィラキシーショック」という状態になり、呼吸困難や意識の低下などを引き起こし、命を落とす可能性もあるのです。
実際に、過去にはおかわりした給食にアレルゲンが含まれていたことで亡くなったケースもありました。
このように、「ぼくは知らない」「私は関係ないから…」ではなく、「自分にも関係のある話」だと実感をもつことが第一歩です。
②誰にでも突然起こりうること
食物アレルギーは、生まれつきの人だけに起こるわけではありません。
ある日突然、今まで食べられていたものに体が反応してしまうこともあるのです。
「学童の食物アレルギーの変遷と対応:公立学校共済組合」によれば、食物アレルギーは乳幼児期に発症することが多いですが、学童期以降に発症する人もおよそ2割いるとされています。
つまり、「今は大丈夫」な子どもでも、将来アレルギーになる可能性があるということです。
この事実を知ることで、子どもたちは*「他人事じゃない」「明日は自分のことかもしれない」という当事者意識をもちやすくなります。
③社会にはアレルギーで苦しむ人がたくさんいる
2023年6月29日の朝日新聞の記事によれば、食物アレルギーがある子どもが52万人以上いると伝えています。
食物アレルギーがある児童生徒が全国の公立小中高校に約52万7千人いることが、昨年度、9年ぶりに実施された大規模調査で判明した。2013年の前回調査より約12万人増えた。
これは、決して特別な人の話ではありません。自分の周囲にいる友達の中にも、アレルギーで困っている人がいるかもしれません。
そう考えることで、子どもたちの中に「思いやりの気持ち」や「行動で助けたいという意識」が自然に育っていきます。
④対応方法を知れば命を救える
何よりも伝えたいのは、正しい知識があれば、誰かの命を守ることができるという事実です。
たとえば、給食中に「気分が悪い」「顔が赤くなってきた」などの変化に気づき、すぐに先生に伝えることができれば、大きな事故を防げるかもしれません。
また、アレルギーのある友達が、うっかりおかわりをしそうになったときに「それ、食べて大丈夫?」と声をかける。
あるいは、給食の献立表にアレルゲンが含まれている日を確認して、「今日は○○さんの除去食の日だね」とみんなで気にかける。
そんな小さな気づきや声かけが、命を守る行動につながるのです。
見える化とルールで事故を防ぐ
食物アレルギーをもつ子どもたちが安心して学校生活を送るためには、担任や養護教諭、栄養士などの大人の対応だけでなく、子どもたち自身の理解や学級での仕組みづくりが欠かせません。
前述した「命を守る学級づくりを実現するための指導ポイント」をふまえた上で、「見える化」と「ルールの共有・徹底」することにより、重大な事故を未然に防ぐことができるようになります。
献立表を“見える化”する工夫
給食の献立表は、ただのメニューではありません。命を守る情報が詰まった大事なツールとして活用しましょう。
たとえば、教室掲示用の献立表に、除去食が出る日を蛍光ペンでマークしておくだけで、担任の先生や子どもたちがひと目で「今日はアレルギーに注意する日だ」と分かります。
さらに、この献立表を「給食分担表」や「給食当番表」の近くに貼っておくことで、子どもたち自身も意識して見るようになります。
とくに、除去食が必要な子どもにとっては、「自分が守られている」と実感できる安心材料にもなります。

朝の会などで「今日の献立」を紹介する時間をつくるのもおすすめです。
学級でルールを共有し、徹底する
学級内でしっかりとルールを共有し、全員で守る意識を育てることが重要です。
- 除去食の対象となった子どもは「おかわり禁止」 ※除去食提供日のみ
- 異変に気づいたら先生に知らせる
- 連絡帳を使い、家庭・本人・担任の3者で情報を共有する
①除去食がある日は「おかわり禁止」
まず徹底しておきたいのは、除去食がある日は、除去食の対象となった子どもは「おかわり禁止」というルールです。
これは本人だけでなく、学級全体で周知することが必須です。なぜなら、除去食のある子どもに対して、周囲の友達が「残っているからあげようか?」「○○さん食べないの?」「食べ終わったのなら、おかわりしなよ」といった善意の一言が、アレルギー事故を引き起こすこともあるからです。
栄養士の先生にお聞きしたところ、「除去食は、通常の量より少し多めに盛りつけられていて、おかわりをしなくても満足できるように調整されています」とのことでした。
ただし、この対応は学校によって異なる場合もあるため、事前に確認しておく必要があるでしょう。
②異変をすぐに知らせる
体調不良をすぐに伝えることの大切さも、子どもたちに繰り返し指導しておきましょう。
「なんだかお腹が痛い」「顔が赤くなってきた」「気持ちが悪い」など、小さな異変に気づいたら、自分で先生に伝える。
また、周りの友達が変だと感じたら、すぐに先生に知らせる。
苦しくなったときは、決して我慢する必要はありません。また、友達の様子を見て「なんだかいつもと違うな」「少し変だな」と感じたとき、たとえそれが勘違いだったとしても、すぐに先生に伝えることはまったく問題ありません。
そういった“伝える勇気”“気づく力”を学級全体で育てていくことが、命を守る文化づくりにつながっていきます。
③連絡帳で情報を共有する
家庭・本人・担任の三者で情報を共有する手段として、保護者が記入する連絡帳やタブレット端末での情報共有を活用することは、とても効果的です。
特に、除去食が必要な子どもについては、「今日は除去食があります」「いつもと違う食材が使われています」など、保護者からの情報を担任の先生がチェックする習慣が、“備え”につながります。
また、除去食の対象ではない子どもであっても、保護者から「最近◯◯を食べると口がかゆくなるようです」「食べ物に少し不安があります」などの情報が寄せられることがあります。
こうした声にも丁寧に耳を傾け、日々の様子を見守る姿勢が大切です。
まとめ
今回は学校でどのように除去食を管理し、どんな体制で命を守っているのか。そして、学級でどんな教育や指導が必要かについて紹介しました。
- 除去食の管理は担任だけでなく、学校全体の連携で行うチーム対応が重要であること
- 子どもたち自身がアレルギーへの理解を深め、「命を守る側」に立てるような学級づくりが求められていること
- 見える化とルールの徹底によって、日々の学校生活の中で重大な事故を未然に防ぐことができるということ
この記事を読んだことで、給食のアレルギー対応については、学校全体・家庭・子どもたちみんなで命を守る体制をつくる重要性に気づいていただけたのではないでしょうか。
食物アレルギーは、子どもたちの命にかかわる重大な課題です。
しかし、正しい知識と、日々の丁寧な配慮、そして子どもたちの“気づく力”や“伝える勇気”を育てる指導があれば、命を守る学級づくりは必ず実現できます。
担任の先生一人が抱え込むのではなく、「みんなで支える仕組み」と「子どもたちの力」を信じること。それが、これからの給食指導と学級経営に求められている姿です。
明日からの給食の時間が、すべての子どもにとって安心できるものとなるよう、今回の学びをぜひ活かしていきましょう!